【解説】
 どんなに芳しい花(末利迦)の香りも、また香りの高い香木(栴檀)でも、物の香気というものは風向き次第で風上には匂わないものです。しかし、善い言葉を語り善い行いをするものの香りは、風向きに左右される事なくあらゆる方向に匂うものでしょう。
仏教の恩徳をひと言で言えば「悲智円満」であると言われます。お釈迦様の智慧を持ち慈悲の心で人々を救うという意味です。
 東京・板橋区で線路に入った女性を助けようとして、電車にはねられ死亡した警察官、また、『あなたを忘れない』という題で映画にまでなった韓国人留学生の勇気ある行動、世知辛い世の風をものともせず、良心の薫風にてその善き香りを届けてくれたものでしょう。   仏さまの智慧とは、損得、勝ち負け、といったところに価値観をおいた目線で、一喜一憂している人そのものを照らしだす智慧なのでしょう。
   愛すべく色うるわしくとも
   かぐわしき香りなき花のごとく
   語れども行うことなき者の言葉は
   よく語らるるともなんの甲斐なし”
 同じくお釈迦様の言葉です。口では偉そうな事を言うのに行動が伴わないのであれば、それこそ香りのない花のようなもの、耳が痛い警句です。
命の重さとともに伝えられた善き人の馥郁たる清香は、記憶とともにいつまでも薫る残り香であってほしいと願うものです。

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