−楊柳観音祭礼にて−
 楊柳観音様の別名は薬王観音様、仏の世界のお医者さまです。三十三観音のお一人に数えられるほど有り難い観音様としてしられております。
 手には柳の枝を持ち、衆生をお救いになるとの事です。なぜ柳の枝なのか、少し考えて見たいと思います。仏教ではこの柳、一切樹木の王とされ、仏様に供える聖木としては最高のものとされています。また、柳の樹皮には鎮病効果があり煎じると解熱剤にも、頭痛薬で有名なアスピリンは薬効成分サリシンを変形させたものだそうです。
 私達の生活で身近なものをもう一つ、楊柳の楊の字を使った日用品に楊枝(子)があります。楊はやなぎを意味する事から、柳の小枝を使った事が語義となっています。「禍の門」とされる口中の毒気を除く事はお釈迦様もお弟子様方にすすめておられるようです。また日本にはじめてこの楊枝を使う習慣を伝えたのが道元禅師様であった事はあまり知られていないようです。いずれにしましても入り口を清浄にすることで、身体を健康に保ち、心の中までも清めようとする習慣付けを考えられたものでしょう。最近になって口内環境の悪化が内臓の疾病にまで及ぼす影響が取り沙汰されるようになっているようですが、二千五百年も前からお気付きの方が居られたようです。
 後白河法皇の時代から頭痛の守り神様としても崇められる楊柳観音様ですが、この頭痛ゆとりの無い性格や、余裕の無い生活からのストレスも原因の一つでしょう。“柳に風”と気にせずに、また“柳に枝折れ無し”とも申します。柳のようにさらさらと世間の風を受け流す事で、頭痛の種を吹き飛ばす突風もまた吹いてくれるものと信じたいものです。