 |
“梅は早春をひらく”という禅語があります。春が来て、その暖かさに誘われて梅が開花の時を迎えると言えば半ば当然ですが、こちらは梅の花の開花が春という季節をもよおす意味の言葉です。思えばお正月を祝う言葉に迎春や頌春がありますが、季節はまだ小寒を迎えるでもないのに心はすでに春を迎えに行っている感があります。またこの時期の習慣を見てみますと、七日は人日(じんじつ)と言って中国では人の一年を占う日とされております。ご本山永平寺ではこの日は無礼講、修行僧による出し物が繰り広げられ大いにお正月の気分を味わいます。今、改めて考えてみますと、この行事も、大笑いによって招福の気分を積極的に招き入れようとする働きかけだったような気が致します。七草粥にしても、今ではスーパーで手軽にそろえる事ができる七草セット、以前であれば雪を掻き分け凍った土を掘り起こしての摘み草作業が必要だった事を考えれば、そこまでしてでも先取りの気分を招き入れたいという古人の思いのようなものを感じます。また、女性の和服文化も素材や色柄は常に先の季節を取り入れると聞いております。そして日本独自の文化として知られる床の間の室礼(しつらい)も同様、掛け軸や生け花も季節を呼び込む供え方のように見受けられます。この様に考える時、私達の衣食住すべてに先取りの文化があることを再認識させられます。
昨年、一昨年と不景気や偽造問題、弱者を狙う犯罪が相次ぎ、およそめでたさを味わう気分にない方が多いことと思いますが、ここは禅的な考えというよりは古来からの智慧に従い私たち側から春の暖かな気分を装い、世間さまを春に導くほどの心がけこそが大切なのかもしれません。 |
|