先月号、『晋山式ならし』でお知らせした通り今回は本番です。
 晋山式とは、住職として正式にお寺に就く為の儀式で、僧侶としては一世一代の大行持(お寺での行持は事ではなく持)です。師僧様を早くに亡くされた新命和尚(新住職)は若干二十五歳、大本山総持寺で修行を終えたばかりのいわばお坊さんのルーキー、試合のメインイベント(上堂)は他山の僧侶との問答、百戦錬磨の手ごわい相手を次々と打ち取って行かなくてはなりません。
試合終了後、お立ち台(須弥檀)での勝利者の雄叫びかと思いきや、謙遜の言葉、感謝やお礼のメッセージ(自叙・謝語)を述べます。古参の解説者(白槌師)からお褒めの言葉をいただけば、ダッグアウトへと。次にマウンドに上がるときにはいつも先発、しかも二番手(和尚)からエース(大和尚)に昇格です。プライベートではブルペンにはすでにバッテリーを組むお相手(伴侶)もお待ちとの事。リーグ優勝を遂げた今、日本シリーズもすでに手中にあるようです。
さて、晋山式に併せて修行されるのが結制(けっせい)と首座法座(しゅそほうざ)です。結制とは、お釈迦様の教えを元に僧侶が一所に集い修行する事を言います。新命和尚(新住職)を監督に例えれば、知客(しか)副寺(ふうす)書記(しょき)と呼ばれるようなコーチ陣を揃え、その他それぞれの塁を任せる大勢の選手(僧侶)と共にキャンプに入ります。その昔は聖地インドの雨安居(うあんご)修行にならいその期間も九十日に及んだものですが、現在はご本山を除き、一般寺院ではその形式だけが伝えられているものです。
ところでそのキャンプの中、選手のチームリーダーとなるのが首座(しゅそ)で、監督に代わりキャプテンが指揮を執るはじめての他流試合が首座法座、問答を戦わせる事から首座法戦式(ほっせんしき)とも呼ばれます。今回このお役をつとめられたのが新命住職の弟さん、またその補佐弁事(べんじ)にも三男があたり、まさに嬉しい三つ巴。重ね重ねのお祝いに半座を分けたお釈迦様も破顔微笑の二日間でしたでしょう。